!! ご注意  !!


この話は、グロテスクな表現が含まれています。
甘いのが好き、一護と冬獅郎が仲良くなきゃ嫌だ、キャラの性格、設定の捏造なんて 許せないという方はここでさようなら。
正直、今回ちょっと酷いかもしれない。うん。
シリアスで救いのない話(一護と冬獅郎の死にネタではありませんが) となっておりますので、読んだ後、拙者、一切の苦情は言わない覚悟!という方のみ、 下にスクロールどうぞ。























































































































え・・・と、ほんとうにいいんですね?











































































与え続けるは、毒という名の。










 ねぇ、どこで間違った?
 ねぇ、なにが正しい?

 すべては過去に置いてきてしまったんだね。
 











地下深くにある一室に、ひとりの少年が閉じ込められている。
両手両足はベルト状のもので拘束され、その上、全身には動けないように特殊な布を巻きつけられている。
両目は辛うじて封じられていなかったが、少年の目に映る光景は見渡す限り、 清潔さを通り越した、潔癖じみた白しかなかった。
部屋に家具の一切はなく、天井からぶら下る照明の明かりだけが目立ち、それによって 汚れも見当たらない壁や床に眩しさが募る。
瞼を閉じても刺さるような強い光は、許しなどないように、ずっと少年を責め続けた。
部屋に窓はない。
ここに入れられてから見続けているドアは一つ。
時折開くことがあるが、それも拘束され、床に横たえられた少年には、なんの意味を成さない。

無音の、部屋にいる少年の押し殺した呼吸しか響かない真四角で、閉塞された 空間に、久しぶりに人工ではない新たな光が差し込んだ。
ここに入れるのは一人だけだ。
この建物の持ち主で、少年を閉じ込めた張本人である男。
開いたドアから入ってきたその姿に、僅かに少年は目を細め、背を向けた。
ついで、棘を飲み込んかのように眉根が寄せられ、嫌悪と恐れの混じった色が茶色の目に浮かぶ。

「来るな・・・・」

声は木霊して、真っ白な部屋の壁に当たっては収束していく一つの音源の塊のように。
しかし、体を以って表した拒絶は近づく男の歩みを止める術には足らない。
ちいさく響く靴音はちょうど、13歩目で止まった。
あと少しで少年に触れる場所、そこよりもほんの少しだけ遠くに男は立った。
見下ろす緑の目は何の感情も窺えない。顔を伏せたまま少年を見下ろしている。

「こちらを向け、黒埼」

男の右手が容赦なく一護の体を引っ張る。
抵抗など拘束された身ではしようもない。
そして、目の前で彼が差し出したのは今まで少年 ---- 黒埼一護が、この男が部屋に入って きた時から目を背け、意識を逸らしてきたものだ。
この何もない部屋には異質の匂い。強烈な匂い。
恐る恐る顔を上げれば、予想通りのものがそこにはあった。

「冬獅郎・・・お前、またそんなことを・・・・っ!」

彼が手にしているのは人の頭。首から下は、ない。
おそらくは運ぶのが面倒で、用のある部分だけを持ってきたためであろう。
必死に抵抗したのか顔のあちこちに切り傷があった。目は閉じられないままで、口元は 噛み締めたせいで切った血が固まり、苦悶を湛えた形に歪んでいる。
髪を掴んで持つ冬獅郎の手は血に汚れてはいない。ここに来る前に洗ってきたのだろうか 彼がその手に持つものと正反対に、綺麗なままだ。
首から滴る血は骨を覆うように筋肉と脂肪の見える断面から垂れている。
切り取ったのは鋭い刀か。
冬獅郎は、一護に視線を合わせるようにしゃがみ込んだ。
膝下の中ほどまである彼の黒衣は床へと扇のように広がる。
冬獅郎は、手に持った首を引き上げ、自分へと近づけた。

「こいつ、随分抵抗するから手間取ったが、お前が飢える前には間に合ったようだな。
本当に、お前の刀は良く切れる」

薄く笑む冬獅郎の腰に斜めにかけられた鞘。ここに閉じ込められる前に取り上げられた一護の 刀だ。
今はまるで持ち主が最初から目の前の彼であるかのように、従順な姿であった。

「多少鮮度は悪いが、支障ないはずだろう」

確かに随分前に命を失ったらしい肉はそれほど多くの血を溢しはしない。
重力に従い、人間の体の中で最も血が集まる脳から落ちる血は粘度をもっているようで、 床に落ちるその音は重たく響いた。
目を遣れば、男の歩いてきた場所に点々と赤いそれが落ちている。

「やめろ。もう俺はだれも・・・・っ」

冷たい床に顔を押し付ける。
瞑った瞼の裏には消えることのない映像が浮かんでいる。
喉元から湧き上がる衝動を押さえつけると額に脂汗が浮かんだ。
しかし、それは嘔吐感でも不快感からでもない。
それがなによりも、一護を苛む。
-------- こんな体、捨ててしまえたらどんなにいいか。
そんな一護の考え読んだかのように、冬獅郎は哂う。

「また、死にたい、か? それとも殺してくれ、・・・・か?
 いい加減聞き飽きた」

「っ・・・・・!」

反論するように見上げた一護は、目を細めて笑う冬獅郎に言葉を失った。
一護を見下ろす左目は極上の翡翠。
しかし、もう片方あるはずの右目は額から頬へと斜めに走る刀傷に塞がれている。
首を持った右手、その反対、羽織った黒衣の左腕部分はだらりと垂れ下がっている。
その下に腕は、ない。
目と腕の片方ずつを男が失ったのは、もう半世紀も前のことだ。

----------そう、あの時の自分が、目の前の彼から奪ったのだ。





闇。
それを嘗めるように空へと向かい上がる赤い炎と、煙。
逃げ回る足音。悲鳴はまるで渦巻く熱風のように耳を打つ。
目の前で己を見て引きつった顔が、瞬時に赤い色に染まる。
夜に散らした赤い花びらのように舞って、散らばり、そして地面を赤黒く染めた。
フラッシュバックする映像のなかの自分は哂いながら、彼らに向けて黒刀を振り かざしていた。
手に残る肉を絶つ衝撃、顔にかかる血はいつしか嗅覚をも狂わせた。
まるで酔ったようにそれを求めて、殺した。
男も女も子供もみんな。
その中の、一人。こちらに反撃も出来ず、避け続ける男の肩を掴み、刀を振う。
己の名を呼んだ彼。
二つの翡翠がこちらを悲しげに見つめている。


どうして、とその口が呟いた気がした。


自分の刀を避けようと翳した彼の腕に刀が食い込む。
容赦なく、推し進める刃は硬く侵略を阻む骨すら絶った。
落ちた腕。
感覚を忘れ、取り戻した一瞬後に、肩口から吹き上がる血飛沫が一護の頬を濡らした。


『----------!!!!』


痛みに上がる叫びは、爆ぜる火の音と夜を裂いた。
抵抗空しく、ついに彼はその右目と左腕を奪われ、地面に倒れた。
失血で青ざめた彼はそれでも、自分に向けて何度も手を伸ばしていた。
残った右腕だけで必死に自分を止めようとしてくれていたのだろう。


視界はそこで暗転する。


どこでその暴走が止まったのかは分からない。
頬を濡らす雨に目覚めたのだと気づいたのは随分経ってからだった。染み込んだ雨は体を 冷やしていたけれどそんなことはもうどうでも良かった。
雨に沈下した煙の上がる街並み。
そこに倒れる人々は数え切れない。自分の横に落ちている 刀には血がこびり付いていた。
現実は蛇のように自分の脳内へと忍び込んできた。

『・・・あ・・ぁあ・・・・っ』

正気を取り戻した一護が目の前の光景に取り乱し、己の刀を拾い、己の首に当てようした のを誰かが止めた。
刀身を握る手から落ちる血から目を上げるとそこにいたのは確かに昨夜、『殺した』はずの 人間だった。

『と、・・・しろ・・・っ!?』

まさか、人が生きているとは思わなかった一護は、驚きに刀を取り落とした。
それに肩を降ろし、漸く冬獅郎は詰めていた息を吐いて、笑う。

『ああ・・・、悪いがまだ生きてる』

彼の片腕は着ていたシャツを切り裂いて、止血するように結ばれていた。片目を斜めに走る 傷はもう血が止まっているらしい。
しかし、深く入ったためか瞼を開けることは出来ないようだった。
その後、何とか立ち上がった一護は冬獅郎と共に出きるだけ人々の死体を集め、 そこに火を放った。
その中に家族の姿があったのを一護は今でも忘れられない。
隣に立ち、一緒にあの肉の焼ける匂いと曇り空に舞い上がる炎の山を見続けてくれた 冬獅郎に一護は救われた。
しかし、それは何よりもこれからの己の罪に対する罰だったのだ-----------
彼がいる限り、自分は救われ、そして罰せられなければならない。













自分の方を見上げたまま、固まる一護に、その意図を別のものと察したのか、
冬獅郎は持っていた首を興味を失ったように床に投げ捨てた。

「ああ、そうか。俺の方がいいのか?」

グイと襟元を人差し指で下げる。一護の前に晒けだされた彼の首元は白い。
そこにはすでにいくつかの古い噛み跡が残っていた。

「お前はすこし言葉が足りないから困る。ほら、我儘な奴だな」
動けない一護の代わりに、跪く。右腕は一護の頭を支えるように持ち、自分の首元へ と近づける。

「・・・やめっ」
動けない体を必死に揺すって抵抗を試みる。

「黒埼」
冷たい声と強い力を持って押さえつけられた頭。

「っ・・・・・・」
びくりと目を向ければ、先ほどとは打って変わって優しく囁くように冬獅郎は、 一護の耳元へ口を近づけた。


そこから流し込まれる。












「 生きてくれるんだろう? 黒埼。

       俺の為に          」







抵抗が止み、嘘の様に力が抜けていく一護の体にその口元が歪んだ。
白い床に転がった頭が赤い穢れを撒き散らし、恨めしげに男の黒い背を見つめていた。





end.

07.03.05







『 与え続けるは、毒という名の。 』
リク> グロテスクの中にある、純愛。(拍手にて匿名さま)


リクエストしてくださった方には、いろいろとごめんなさいな内容ですみません。
冬獅郎がすごく一護を好きでこんな感じになりました。
死んで欲しくないのでここまでします。(O・NI・ですね!)
少しでもお気に召していただければいいんですが・・・・無理か。
グロ=カニバリズムしか浮かばなかったので、そりゃあ流石にイカンな!と思い 血のほうへと修正。
もっとドロドロでも良かったかな。
片目、片腕のない冬獅郎に萌えるのはきっと自分だけだなと悟るに至る。


inspire song * the veronicas /『leave me alone』